治らない病と治る病「完治と寛解」 (例)腰椎ヘルニアでの腰痛
最近ブログで私が病は治らない治らないとばかり書いていますので、ある人に「病気は治らないのかい!?」と聞かれたことがありました(笑) そこで、今回は「完治と寛解」についての説明を腰痛を例にして書くことにします。では早速…。
完治とは病が完全に治った状態のこと。
寛解とは病や症状が一時的に収まった状態のこと。これは完全に治ってるわけではありません。
ブログの他の記事の内容をきちんと読んで頂ければ私の言う「治らない」がどういう意味を指していることなのかは分かっていただけると思います。 つまり病の多くは寛解はするが、そう簡単に完治はしないという事なのですが、もう少しこれらを考えてみましょう。
完治しないというと「一度かかった病は完全には治らないのか?」 という疑問がわきます。 この質問の答は「なかなか治らないが治るものもある」と言えるでしょう。
寛解は治療を行えば程度の差はあれど普通に起こります。 前述の通り、完治はなかなか出来ないので一般的に皆さんが「治った」と言っているのは寛解のことを指していることが多いです。 患者が医者に先ず一番に望むことなので、当然、寛解させることが治療のとりあえずの目標にもなります。
では、ココで一つ例をあげましょう。 病名はなんでも良いのですが今回は「腰痛」で説明をしたいと思います。ご存知の通り腰痛は腰が痛いという、ただそれだけの事です。その原因には多くのものがありますが、その85%は原因不明のものという記事を以前に書きました。しかし、とりあえず今回は「腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛」だとしましょう。
CASE1
腰椎ヘルニアは本来、腰椎椎間板の中に収まっている髄核という物が本来ある場所から外に飛び出てくるものです。 そして、この飛び出た髄核がもし手術などの治療でなくなればヘルニアの状態ではありません。 その結果、腰痛も無くなったとします。 コレは完治といえます。
CASE2
さて、実際にはヘルニアが有っても痛みが出ない場合があります。
腰椎ヘルニアの方に鍼灸治療などの何らかの治療を行い痛みが取れたとします。 しかし、ヘルニアはあるままなので3日後にまた腰が痛くなりました。 コレは明らかに寛解です。 原因はそのままで3日という一時的な症状の消失ですから。 さて、もしもこの3日が7日だったならどうでしょう? 一ヶ月なら? 一年なら? 一生なら? 寛解であるはずなのに痛みが一生でないとなれば完治ではないか?と思えますが、腰椎ヘルニアは残ったままです。 いつ腰痛が再発してもおかしくない状態ではないでしょうか? 果たして完治と寛解。 いったいどっちでしょう?
CASE3
腰椎ヘルニアを手術で治療して、「腰椎ヘルニアは」「完治」させ腰痛も消えました。 しかし、しばらくして腰痛が再発したとします。 この場合、腰椎ヘルニアは「完治」 腰痛は「寛解」だったということです。
どうでしょう? 腰椎ヘルニアが腰痛の原因であるなら、それを取り去れば腰痛が治るのは当たり前です。しかし、現実には腰椎ヘルニアの状態でも腰痛にならない人は沢山います。 そして、手術をしてヘルニアを治した人も腰痛で苦しむ人が沢山います。 貴方は治療を何か行ったあとに消えた腰痛について、完治したのか寛解なのかを区別することができますか?
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そんなん普通できません(笑)
しかし一応、理屈の上では区別できます。 医者が患者に説明する時や学問としての医学を勉強するのに出来ないと不便なので。
上記のCASE1と2を見てみてもらえば解りますが、完治するというのは原因が完全に取れている状態です。 反対に、寛解とは、原因はそのまま。症状のみが緩和、消失したものです。
完治とは、原因がはっきりしていてその「根治が確認」出来た場合にのみ断定できます。 それ以外は寛解としか言えません。
CASE2の後半部分と3は特殊で原因(ヘルニア)と症状(腰痛)の因果関係が成り立っていると証明できないものです。だからこれらの場合はどちらも腰痛に関しては寛解となります。
現代医学において病気の原因が本当の意味で解っているものはかなり少なくその殆どが感染症です。風邪や腰痛、四十肩、膝痛、癌、糖尿病、高血圧など…。日常生活でお目にかかる多くの病は全貌がハッキリしていません。 これは感染症は原因が基本的に一つだけなのに対し、それ以外は複数あることが多いため解明しきれていないということです。細かく細かく分類する現代科学は原因が多数あるものに対し、極めて非効率な学問ですから。
ただ、科学の発展によりそれらの病気の原因となる「一部」は解っていることが多いです。(ヘルニアで腰痛など) 解明されている原因で病んだ場合で治療法が確立していれば比較的、完治が見込めます。しかし、完治したはずなのにまた再発するとなると結果的にその症状と原因は因果関係がなく寛解しかしていなかったということです。 現代医学はわかっている原因に目標を定めて治療を進めますから、理論的には完治ですが、現実は寛解。もしくは無効。 こんなケースはままあります。ココの所を理解しておかないと「あの医者は治ったと言ったのにまだ腰が
痛いやんけ!! 嘘つきのヤブめ!」となるのです(笑)
東洋医学と西洋医学では同じ病気でも病理の考え方が違います。なので西洋医学では原因不明でも東洋医学では原因がハッキリしているということがあります。 つまり、西洋医学では寛解の域を出なくても、東洋医学的に考えて「完治」した。と言えることもあるのです。しかし、それでも殆どの場合、自信を持ってもう大丈夫!これで完治。と言える状態を目指すのは大変なことです。 定期的な治療と患者自身の自己管理が最低限必要です。
原因がすぐに取れる病は簡単な病で本当の意味ですぐに治ります。 なかなか原因が取れないのは複雑な病。 複雑な病は治療期間を長く必要とします。そして、症状が寛解しても何れ再発しますので管理のために定期的な治療が望ましいです。 また、医者でも原因がハッキリしない病を、日々変化する体の完治と寛解を本当の意味で全て区別し知ることは困難です。だから体の反応に怪しい部分があると「完治したよ」とはなかなか告げられません。しかし、原因と思われるものを根治していれば理論上「完治させた」とは言い切れることが有ります。
当たり前ながら一般の方はなおさらこの判断、区別がつかないので症状がなくなると短絡的に「治った!!」と思う人があまりに多いのです。なので私は「病はそう簡単に治らないよ」と言い続けているのです。
因みに、ウチの初診時には寛解すれば良いのか?完治させたいのか?という意味の質問があります。寛解なら治療期間が短い可能性が高く、完治させるなら寛解後の体のメンテナンスを含めそれなりの期間、私とお付き合いをしていただくことになります。 もちろん、初めは適当に答えてその後の経過で変更してもらっても結構です。 恐らく初診時しか質問しないので後はこっそり貴方の心の中で(笑)
今回は腰椎椎間板ヘルニアを例に取り上げましたがどのような病でも基本的に同じです。往々にして経過の長いもの(慢性病)は原因が突き止めにくいので完治しにくく、短いもの(急性病)は原因が分かりやすいので完治しやすいですが、今ある症状が出る前から本人が気づかないだけでずっと病んでいたということもあります。 この場合、強い症状が出る以前の気づかない時期はいわゆる(半)病人状態だったわけですが、一般的にはこのころを病気の時期とはカウントしないのですね。あくまでも症状が出て(もしくは診断がついて)初めて病に罹ったとされます。 東洋医学では初めから立派な病なのですが…。
オマケです。
もちろん、治療後は腰痛の完治だったものが、その後の生活で何らかの別の原因により新たな腰痛になるということも十分にありえます。 ココまで考えるとかなりややこしいですね。 寛解したものの再発なのか?新たな病の発症なのか?それを見分ける事もまた大切です。しかしこれは今回の本題からズレるので置いときましょう^^
※ここで出てくる医者とは医師限定ではありません。西洋、東洋、手技などを問わず医に関わる全ての人達です。